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統合失調症の症状と治療

  • 斎藤知之
  • 2025年12月3日
  • 読了時間: 7分
統合失調症の症状と治療

統合失調症とは、幻聴や妄想が特徴的な精神疾患で、20歳前後(10代後半から30歳くらいまで)に発症することが多いです。統合失調症は心の病気ではありますが、気持ちの問題というより脳の病気という側面が強い精神疾患です。ここでは統合失調症の症状や治療について詳しく解説します。


目次

統合失調症の症状

統合失調症の治療


統合失調症の症状


統合失調症は、人によって症状は異なりますが、主な症状は陽性症状、陰性症状、認知機能障害に分かれます。また、典型的な症状が出る前に前駆症状が出ることも特徴です。


統合失調症の陽性症状


陽性症状とは幻覚(誰もいないのに人の話し声が聞こえるなど)や、妄想(誰かが自分を見張っているなど)を指します。精神疾患としての妄想は、想像や空想と区別します。妄想とは、特に根拠もないのにそれが事実だと完全に思いこんでいる、確信している場合を指します。幻聴や妄想は精神病症状とも言いますが、ようするに現実を正しく認識できなくなる症状を指します。


統合失調症の陰性症状


陰性症状とは本来あるはずのものが欠ける状態のことです。陰性症状には、意欲が無くなる、表情や感情がとぼしくなる、活動が減る、家に引きこもる、などがあります。陰性症状はうつ状態に似ている症状で、前駆期には陽性症状が目立たず、陰性症状ばかりが強く出ることがあります。そのため、統合失調症の前駆期では、うつ病と間違われやすくなります。


統合失調症の認知機能障害


認知機能障害は認知症と似た概念ですが、統合失調症の認知機能障害は記憶力の低下よりも、言語機能の低下(話すのがたどたどしくなる)や注意機能、集中力の低下、物事を順序立てて考えたり計画したりする遂行機能の低下などが目立ちます。


統合失調症の前駆症状


統合失調症では幻覚や妄想などの陽性症状が出た時を「発症」と捉えますが、この前に前駆期があることが多いです。前駆期では、陰性症状や認知機能障害が目立ち、学校の成績が下がってきたりします。また、はっきりとした幻覚や妄想などの陽性症状がなくても、なんとなく誰かに見られている気がする、誰もいないのに人の気配を感じる、物音や光に敏感になるなど、陽性症状にやや近い症状が出ることもあります。統合失調症の前駆症状は、他の精神疾患との見分けがつきにくいため、社交不安症やうつ病などと間違えられることがあります。


統合失調感情障害


統合失調症は、同時にうつ病または双極症(双極性障害・躁うつ病)の症状も一緒に出ることがあります。この場合を、統合失調感情障害と診断しますが、これも統合失調症の一種として考え、治療していきます。


鑑別診断


統合失調症と区別が難しい精神疾患は色々とあります。例えば、対人恐怖が強まる社交不安症(社交不安障害)という精神疾患は統合失調症の前駆期の症状と近く、鑑別が難しいことがあります。強いストレスで一時的に幻覚や妄想が出る場合は短期精神病性障害と診断され、統合失調症とは区別されます。短期精神病性障害の状態なら、通常1ヶ月以内に改善が見込まれます。また、うつ病や双極性障害の症状として幻覚や妄想が出る場合もありますが、これは統合失調症ではありません。その他では、自閉症スペクトラムなどの発達障害の方の中には、興奮した時に統合失調症の陽性症状に近い症状を出す人がいます。


身体疾患でも、統合失調症と似た症状を出すことがあります。例えば、膠原病(免疫の病気)やホルモンの病気が幻覚や妄想などの症状を出すことがありますし、様々な脳の病気、例えば脳腫瘍や髄膜炎、自己免疫性脳炎なども統合失調症に似た症状を出す可能性があります。また、覚せい剤やLSDなどの薬物は統合失調症と似た症状を出します。


統合失調症と診断する時は、こうした病気を鑑別します。


統合失調症の治療


統合失調症の内服薬


統合失調症では、まずは薬により幻覚や妄想などの陽性症状を治療します。統合失調症の治療薬は、抗精神病薬というタイプです。抗精神病薬は脳のドパミン受容体をブロックする薬で、これによりドパミンという神経伝達物質の力を抑え、幻覚や妄想などの陽性症状を治します。抗精神病薬は、基本的に内服薬(のみぐすり)です。


抗精神病薬には定型抗精神病薬(第1世代)、非定型抗精神病薬(第2世代)がありますが、一般的には副作用が少ない非定型抗精神病薬を優先的に使います。非定型抗精神病薬には、ブレクスピプラゾール(レキサルティ)、アリピプラゾール(エビリファイ)、アセナピン(シクレスト舌下錠)、オランザピン(ジプレキサ)、リスペリドン(リスパダール)、パリペリドン(インヴェガ)、ブロナンセリン(ロナセン)、ペロスピロン(ルーラン)などがあります。


こうした薬は飲んだ途端に症状が無くなるものではなく、何週間も続けることで効果が徐々に出てくるものです。飲み忘れたり、勝手に減らしたりすると効果が落ちますので注意が必要です。


また、症状が落ち着いてからも、幻覚や妄想の再発を予防するために薬を使い続けていきます。これを維持療法と呼びます。統合失調症は再発しやすい病気です。再発すると病状が一気に悪化し、その後に回復が難しいこともあるので、薬を続けて再発を防ぐことが重要です。


統合失調症の注射薬


もし、毎日内服することが難しければ、数週間に一度注射する方法もあります。抗精神病薬には、一度注射すると数週間にわたって効果が続く、持効性注射剤(デポ剤)というタイプがあります。これなら、数週間に一度薬を注射すれば、薬を飲む必要がなくなります。持効性注射剤を使う方が、将来的に入院するほど症状が酷くなる可能性を減らせるというデータもあり、再発予防の手段として有効です。アリピプラゾール(エビリファイ)、パリペリドン(ゼプリオン)、リスペリドン(リスパダールコンスタ)、ハロペリドール(ハロマンス)などの抗精神病薬には、持効性注射剤のタイプがあります。なお、持効性注射剤を使う前に、同じタイプの内服薬を継続して効果や副作用などを確認する必要があります。内服薬で問題ないことを確認したあとで、内服薬から持効性注射剤に切り替えていきます。


統合失調症の貼り薬


ブロナンセリン(ロナセン)には貼り薬もあります。これは湿布のように皮膚から薬が吸収されるもので、毎日張り替えることで内服薬と同等の効果を持ちます。


難治性統合失調症の薬


なかなか治療薬を使っても症状が改善しない場合、クロザピンという薬を使うことがあります。クロザピンも内服薬(のみぐすり)です。クロザピンの副作用として、無顆粒球症という血液の細胞が少なくなる病気や心筋炎という心臓の病気になるリスクがあります。そのため、クロザピンは検査をしながら慎重に使い始めます。また、使用できる医療機関が限られています。

※よりどころメンタルクリニック桜木町ではクロザピンは使用できません。


電気けいれん療法


薬の治療以外には、電気けいれん療法という治療もあります。これは、脳に電気を流して、てんかん発作という症状を人工的に作り上げる治療で、入院して麻酔をかけて行います。電気けいれん療法には即効性があり、興奮や躁状態、うつ状態などの気分症状を改善する効果に優れています。ただし、電気けいれん療法の効果は徐々に無くなってしまいますので、電気けいれん療法は、急性期の一時的な改善を期待して行います。その後はやはり薬物療法が必要になります。


社会的介入・サポート


統合失調症では、たとえ薬物療法によって陽性症状が改善しても、陰性症状や認知機能障害が残ってしまう場合があります。こうした症状も生活に障害をもたらします。特に、統合失調症になると、仕事やお金、住まいなどの生活の問題をかかえることが多いです。


そこで、ある程度、治療によって陽性病状が改善したら、生活を改善し、社会復帰するためのリハビリに移ります。こうしたリハビリも治療の一環だと考えてください。


たとえば、精神科の医療機関についているデイケアでは、生活のリハビリを行うことができます。また、就労移行支援や就労継続支援などの福祉系施設では、仕事の練習だったり就職のサポートを行っています。一般企業や特例子会社などで、障害者雇用という働き方を選択することもできます。


経済面での障害福祉サービスとしては、障害年金により生活費を支援してもらうものもあります。


こうした障害福祉サービスは、リハビリや病気の治療としても重要ですから、ぜひ自分に合ったものを利用することをおすすめします。


参考文献:統合失調症薬物治療ガイドライン(日本神経精神薬理学会)


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