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治療と就業の両立支援の新しいルール

  • 斎藤知之
  • 8 時間前
  • 読了時間: 6分

治療と仕事の両立支援

メンタルの不調、精神疾患になった場合、会社に仕事を続けるための支援や配慮を求めることができます。心の治療と就業の両立支援の制度について解説します。


「最近、夜眠れない」「仕事中に涙が出てくる」「会社に行くのが限界かもしれない」


うつ病や適応障害などの精神疾患、メンタルヘルスの不調は、外からは見えにくいため、周囲に理解されず一人で抱え込んでしまう方が多くいます。「これ以上、会社に迷惑をかけられないから辞めるしかない」と思い詰めてしまう前に、国が定めた新しいルールを知っておきましょう。


労働施策総合推進法が改正され、2026年(令和8年)4月1日から、会社は「従業員が治療を続けながら働けるようにサポートすること」が努力義務になります。これが、治療と就業の両立支援と呼ばれる制度です。


今回は、メンタルヘルス不調を抱えながら働くあなたが、自分の心とキャリアを守るために知っておくべき「新しい制度とアクション」を分かりやすく解説します。


メンタル疾患も対象!「治療と就業の両立支援」とは


法改正により、「精神疾患やメンタル不調になったからといって一方的に退職を迫ってはいけない」「会社は、働き続けられるよう(あるいはスムーズに復職できるよう)可能な配慮を行うよう努めなければならない」ということが、より強く国から示されることになります。正社員、契約社員、パートなど、雇用形態は問いません。


「周りに知られたくない…」プライバシーは守られる?


メンタルヘルスの問題で一番の壁となるのが、「上司や同僚に病名を知られたくない」「精神疾患に対する偏見(スティグマ)が怖い」という不安です。


国の指針では、病歴や治療の状況は非常にデリケートな「要配慮個人情報」として厳格に扱うよう企業に求めています。つまり、あなたの同意なしに、人事や産業医から上司・同僚へ病名が勝手に伝えられることは法律で禁止されています。


「業務量の調整はしてほしいけれど、周囲には『体調不良のため』とだけ伝えてほしい」といった要望も、本人の意思が最大限尊重されます。


メンタル不調で受けられる支援・配慮の具体例


「会社に配慮をお願いする」と言っても、具体的にどうすれば働きやすくなるのか、自分でも分からないことが多いと思いますので具体例をお示しします。


具体的な支援・配慮の例

  • 残業や休日出勤の免除(定時退社)

  • 業務量の削減

  • 締め切りに余裕を持たせる

  • 責任の重い業務(リーダー職など)からの離脱

  • 人間関係の対立への配慮

  • 満員電車を避けるための時差出勤

  • テレワーク(在宅勤務)の活用

  • 定期的な通院のための半休や時間単位有休の取得

  • 中抜け(業務時間中に病院へ行き、戻って働く)の許可

  • 短時間勤務

  • 休職した場合、復職時の試し出勤(時間や日数を減らして勤務すること)


また、ハラスメントについては、職場内のハラスメントだけでなく、顧客や取引相手からのハラスメント、いわゆるカスタマーハラスメントについても会社としての対応を求めることができます。


このように、会社に一定の支援や配慮を求めることは可能ですし、会社もそれに応える努力をする必要があります。ただし、従業員が会社に命令できるわけではありません。たまに、従業員側から高圧的に会社に要求するケースがありますが、これはトラブルの元です。クレーマーのような態度をとると、最終的に損するのは自分自身です。会社に支援や配慮を求める時は、礼儀正しく、謙虚に申し出るよう心がけましょう。


また、会社にこうした制度がないとか、業務上どうしても難しいという理由で支援・配慮を断られることもあります。そのため、あらかじめ会社にどのような制度があるのか確認することが大事です。


主治医に自分の仕事状況や会社の制度を伝えるために、勤務情報提供書両立支援カードなどの書面を作成します。


両立支援カードとは


話し合いを始める時は情報共有が大事になります。「両立支援カード」は、治療を受けながら働き続けることを希望する従業員が、職場や働き方等の情報を記載して医療機関に提出し、従業員の主治医が会社側や産業医に対して必要な情報提供を行うための書式です。両立支援カードは勤務情報提供書(仕事の状況や会社の制度を記入するもの)と医師の意見書(診断書)がセットになっています。この両立支援カードを利用することで、会社側や従業員側の意見や主治医の見解などの情報が集まります。こうした情報共有のもとで、治療と仕事を両立させるための支援・配慮について話し合うことが大切です。


会社にサポートを求めるステップ


今の働き方が限界だと感じたら、以下のステップで動いてみましょう。


Step 1:自分から会社に言うことがスタート


会社側から支援や配慮をもらうには、先に従業員から言う必要があります。配慮をもらう時には、どのような業務が負担になっているのか、どのようなストレスがあるのかなども明確に伝えましょう。なお、もしも直属の上司がストレスの原因になっている場合、その上司に話す必要はありません。人事部、労務担当、あるいは社内の産業医や保健師など、客観的に話を聞いてくれる窓口に相談してください。


Step 2:職場の制度を確認する


人事部や労務担当の方と話し、職場としてどのような支援や配慮が可能なのか、時短(短時間勤務)、時差出勤、在宅勤務などの制度はあるのか、休職する場合は何ヶ月まで休めるのかなど、職場の福利厚生についての制度を確認しましょう。そして勤務情報提供書または両立支援カードを活用する場合は、そこに会社の利用可能な制度を書き入れます。


Step 3:主治医に仕事の状況や会社の制度を伝える


精神科や心療内科を受診して、主治医に、今の仕事の状況や会社にある支援・配慮の制度、福利厚生の制度を伝えましょう。この際に、勤務情報提供書または両立支援カードを書いている人はそれを主治医に見せてください。そして、自分が「仕事を続けたい(あるいは休みたい)が、どうすればいいか」を主治医に相談します。


Step 4:主治医から意見をもらう


主治医に、今どのような症状があるのか、どのような治療が必要なのか、そのために会社のどのような制度を利用する方が良いのかなどの意見をもらい、書面に記載してもらいます。主治医にこうした事柄を両立支援カードに記載してもらっても大丈夫です。


Step 5:無理のない働き方を会社とすり合わせる


主治医の意見が書かれた書面を会社側の担当者に見せて、具体的な支援・配慮の制度や働き方について話し合います。産業医や保健師などの医療スタッフがいる場合は、その人たちとの面談も必要になるはずです。多くの人の意見をすり合わせながら、自分はどうすれば心身の状態を安定させながら働けるのかを考え、無理のないプランを立てることが大事になります。


おわりに:焦って判断しないこと


メンタルヘルスが不調なときは、正常な判断ができなくなっている状態です。「もう無理だ、明日辞表を出そう」と衝動的に辞めてしまうと、その後は大変苦労するかもしれませんし、経済的な不安から症状が悪化することもあります。


まずは立ち止まり、「両立支援」の仕組みに頼ってみてください。会社にはあなたを守るための窓口やルールが存在するはずです。まずは主治医や産業医、人事の担当者に「SOS」を出すことから始めてみましょう。


参考:厚生労働省の指針


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