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精神疾患の障害年金

  • 斎藤知之
  • 3月26日
  • 読了時間: 6分
精神疾患の障害年金


「治療を続けているけれど、症状が重く働くことが難しい」

「今後の生活費に不安がある」


このように、精神疾患によって日常生活や仕事に大きな支障が出ている場合、経済的なサポートとして「障害年金」という制度があります。経済的な安心感は精神疾患の改善にも繋がりますので、要件に該当するなら障害年金を申請することをおすすめします。よりどころメンタルクリニック桜木町にも障害年金の診断書の作成依頼やお問い合わせを多くいただきます。


しかし、障害年金は「申請すれば誰でもすぐにもらえる」というものではありません。この記事では、精神疾患における障害年金の基本から、受給のための条件、審査のポイントについて詳しく解説します。


目次


  1. 精神疾患における障害年金とは?


障害年金とは、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる公的な年金です。


精神疾患を持つ人も障害年金の支給対象になりますが、「精神症状が長期に続いて普通の生活ができない」とか「何度も再発を繰り返していて困っている」ことが前提となります。一時的な気分の落ち込みや、「(働ける状態だが)自分の意思で働かない」といった場合は障害年金の対象になりません。


障害年金の対象となる主な精神疾患には、統合失調症、うつ病、双極性障害(躁うつ病)、発達障害、知的障害などあります。なお、パニック障害、不安障害、強迫性障害などは症状が軽い、または、一過性と考えられて年金支給の対象にならないと言われることが多いので注意してください。


  1. 基礎年金と厚生年金の違い


初診日(初めてその病気で医師の診察を受けた日)に加入していた年金制度によって、受け取れる年金の種類と等級が以下のように異なります。


  •  障害基礎年金:初診日に国民年金に加入していた方(自営業、学生、無職など)。1級と2級のみ。

  • 障害厚生年金:初診日に厚生年金に加入していた方(会社員など)。1級、2級に加え、より症状の軽い3級があります。また、初診日から5年以内に病気が治り、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残ったときには障害手当金(一時金)が支給されます。


  1. 障害等級の目安と審査のポイント


障害年金の等級は、1級〜3級まであります。審査で重視されるのは、「自立した一人暮らしができるか」「働けるか」という点です。


  •  1級:他人の介助がなければ日常生活を全く送ることができない状態。

  •  2級:必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活が極めて困難で、労働によって収入を得ることができない状態。

  •  3級(厚生年金のみ):日常生活には著しい制限はないが、労働環境に大きな制限を受ける状態。


なお、等級の審査を行うのは「主治医」でも「診断書を作成する医師」でもありません。よく「主治医が年金の支給を判断してくれる」と誤解されることがありますが、これは間違いです。主治医はあくまで事実に基づいた「診断書」を作成するだけです。その診断書や提出書類をもとに、行政機関に雇われた医師(障害認定審査医員)などがガイドラインに沿って支給の可否や等級を判定します。


働きながらでも受給できる?


無職でなければ障害年金をもらえないわけではありません。通常の人と同じように働いている場合は年金は支給されない可能性が高いのですが、例えば、就労継続支援(A型・B型)を利用して働いている場合や、障害者雇用などなように精神疾患を理由に職場から大きな配慮を受けている場合は、働いていても2〜3級と判定される場合があります。


  1. 障害年金を申請するための「3つの条件」


障害年金を受け取るためには、以下の3つの条件(要件)をすべて満たしている必要があります。


  1. 初診日要件: 初診日から「1年6ヶ月」が経過していること(障害認定日)。知的障害など一部の例外を除き、初診日から1年半経たないと申請できません。

  2. 保険料納付要件: 初診日の前日において、次のア)イ)のいずれかの要件を満たしていることが必要です。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。

    ア)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。

    イ)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。

  3. 障害状態要件: 障害認定日(または現在)において、国が定める障害等級(前述)に該当していること。なお、しっかり通院していないと等級について判断できないため、年金を申請できないことがあります。自己判断で治療を中断しないように気をつけてください。


  1. 障害年金申請の大まかなステップ


障害年金の申請は非常に労力がかかる作業です。無理をせず、ご家族や専門家(社会保険労務士など)のサポートを受けながら進めることをお勧めします。


  1. 初診日の確定と証明: 最初に受診した医療機関で「受診状況等証明書」を書いてもらいます。(当院が初診の場合は不要です)

  2. 診断書の取得: 主治医に、障害年金用の診断書の作成を依頼します。

  3. 「病歴・就労状況等申立書」の作成: ご自身(またはご家族)が、発病から現在までの日常生活の困難さや就労状況を記載する重要な書類です。

  4. 年金事務所へ提出: 必要書類を揃えて年金事務所に提出し、審査結果(数ヶ月かかります)を待ちます。


  1. 診断書作成に関する当院からのお願い


最後に、当院で診断書を作成するにあたっての重要なお願いです。


精神保健福祉士が対応します


当院では精神保健福祉士(ソーシャルワーカー/ケースワーカー)が年金申請に必要な経歴や生活状況、職業状況を聞き取ったり、年金制度についてご案内したりしています。当院で障害年金の申請をご希望の方は、精神保健福祉士が対応できる時間にご予約いただきたいので、事前にお知らせください。予約時間については、診察時に聞いていただくか、当院までお電話(045-325-7258)ください。


診断書には事実のみを記載します


当然ですが、医師は診断書に「事実しか書けない」ことになっています。「年金が通りやすいように、実際よりも重く書いてほしい」といったご要望には絶対にお応えできません。年金をもらうために診断書に虚偽を書くことは違法行為となりますので、ご理解ください。


不支給の責任について


前述の通り、障害年金の支給を決定するのは行政の審査機関です。医師が客観的な事実に基づいて診断書を書き、その結果として「不支給」や「想定より低い等級」になったとしても、医師やクリニックに責任はありません。残念ながら、障害年金について医師への悪質なクレームやカスタマーハラスメントに発展するケースが時々あります。これらの行為は診療業務の妨げとなりますので、固くお断りいたします。


障害年金は、治療を続けながら生活を立て直すための大切な制度です。制度の詳細の個別のご相談は、お近くの年金事務所や街角の年金相談センターへお問い合わせください。


 参考リンク:日本年金機構(障害年金)


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