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指定医レポートについて

  • 斎藤知之
  • 1月1日
  • 読了時間: 14分

更新日:10 時間前

こちらは若手精神科医向けの指定医レポートの解説です。指定医を目指す方へのメモ書きになります。一般の方には不要なものですので、ご理解ください。


引用元:ケースレポート及び口頭試問の評価基準(厚生労働省)


1.基礎的事項


① 自ら担当として診断又は治療に十分関わりを持った症例(※)であるか。

※ 少なくとも1週間に4日以上、当該患者について診療に従事したものでなければならない。

コメント:過去に担当していない症例をレポートに提出して指定医取消となった大事件がありましたので、虚偽の記載は絶対に控えてください。

② 精神保健福祉法の理解が十分であり、法の運用上、不適切な点や違法性はないか。

コメント:人間の自由を制限するには相当な理由が必要であることを特に意識してください。

③ 臨床精神医学の基礎知識が認められるか。

コメント:精神医学の基礎知識は指定医レポートにおいてほとんど求められませんので、最低限の記載で十分です。

④ 論旨が不明瞭等、ケースレポートとして不適切な点はないか。

コメント:指定レポートは疑義の余地がない明確な内容が必要です。分かりにくい記載は避けましょう。

⑤ 差別用語など、不適切な表現・用語の使用がないか。

コメント:差別用語をレポートに記載する人はいないと思うので、ここは無視してください。


2.症例内容

<共通事項>


① 国際疾病分類(ICD)に基づく診断名(入院時診断名/最終診断名)が記載され、患者の症状と照らしてその診断名に妥当性が認められるか。

② 診断根拠が記載され、その内容に妥当性が認められるか。

③入院時に疑い病名としていた場合、その理由と最終診断を下した日付が記載され、その内容に妥当性が認められるか。

コメント(①②③):診断学上のチェックは少ないので、診断基準となる症状が最低限、現病歴に記載されていれば十分です。なお、疑い病名で入院させて後日精神疾患ではなかったと判明したら、違法と判断される可能性があります。そもそも稀有だと思いますが、疑い病名で入院させた症例を指定医レポートに用いないようにしてください。

④入院後の治療経過や治療内容について努めたインフォームド・コンセントの内容が適切に記載されているか。また、その過程における主治医等担当医としての関わりや治療努力(※)が記載されているか。

※ 以下の点に特に留意

・ 修正型電気けいれん療法、多量・多剤大量の薬物療法、クロザピンなど慎重を要する治療手段が用いられた場合、その理由と必要事項に関する記載があるか。

・やむを得ず適応症以外での薬物使用を行う際には、使用の理由と本人や家族にその効果や副作用を含めた説明を十分に行い、同意を得ているか。

⑤ 患者の症状、診断内容に照らし、治療内容に妥当性が認められるか。

コメント(④⑤):指定医レポートにはガイドラインに沿った治療をした症例を用いてください。ETCやクロザピンは適応があれば問題ありませんが、多量・多剤大量の薬物療法にエビデンスはなく、医の倫理的に控えるべきです。また適応外処方は健康保険法に反する可能性があり、指定医レポートに適しません。倫理的・法的な問題を抱える症例をレポートに用いないことを勧めます。


<入院形態など症例の属性に応じた事項>


措置入院


①患者の症状及び措置入院の対象となる者の要件を踏まえ、措置入院を行う必要性が記載され、その内容に妥当性が認められるか。

②患者が精神保健福祉法第5条第1項に規定する精神障害者であるか(国際疾病分類(ICD)に該当する精神障害を有しているか)。

③ 患者が、

・医療及び保護のために入院させなければ

・その精神障害のために

・自傷(※1)又は他害(※2)のおそれがある と認められるか。

※1 自殺企図等、自己の生命、身体を害する行為。浪費や自己の所有物の損壊等のように単に自己の財産に損害を及ぼすにとどまるような行為は含まれない。

※2 殺人、傷害、暴行、性的問題行動、侮辱、器物破損、強盗、 恐喝、窃盗、詐欺、放火、弄火等他の者の生命、身体、貞操、 名誉、財産等又は社会的法益等に害を及ぼす行為(原則として刑罰法令に触れる程度の行為をいう。)

コメント(①②③):措置要件では、他害の定義は具体的なのに、自傷の定義が曖昧です。しかし、あくまで重篤な自傷行為だけが措置入院の理由になると捉えてください。措置入院は強制的に自由を奪うもので、逮捕や収監と同等と考えられるものです。単に法に背いただけでは逮捕されませんよね。国家が人の自由を奪うには、それに見合うほどの理由が必要です。したがって、全ての自傷行為で措置入院が適用されるわけではありません。たとえば、浅いリストカット程度であれば放置しても大きな問題にならないので措置入院は適用されません。あくまで生命の危機や障害が残る可能性があるほどの重篤な外傷など、放っておくと本人に深刻な被害が出る自傷行為だけが措置要件だと理解してください。

また、精神保健福祉法では政令指定都市の市長が知事と同等の権限を持つことについて、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律における大都市特例の施行について」をご参照ください。

※措置症例の例文:〇年〇月〇日、(自傷他害の様子を記載)、通報により駆けつけた警察官に保護されたところ、精神障害により(自傷または他害)のおそれがあると考えられたため、警察官が最寄りの保健所長を経て(都道府県知事または政令指定都市市長)へ通報し、同日患者は当院に搬送された。2名の精神保健指定医(以下「指定医」)が診察した結果、診断は○○であり、本人は○○状態で、入院させなければその精神障害のために(自傷または他害)のおそれが極めて高く措置入院が必要と両指定医の判断が一致した。(保健所職員、市職員または都道府県職員)により措置入院の告知がなされ、その旨を診療録に記載した。同日、(都道府県知事または政令指定都市市長)の決定により措置入院となり、当院に入院した。(令和6年以降に入院した場合)また、速やかに精神保健福祉士が退院後生活環境相談員として選任され、早期の地域移行に向けた支援体制の構築に取り組んだ。

※検察官通報の書き出しを次を参照:令和〇年〇月〇日、〇〇の容疑で逮捕・送検されたが、精神鑑定の結果、統合失調症による幻覚妄想状態の影響が強いと判断され、不起訴処分となった。これに伴い、検察官より都道府県知事へ通報がなされた。

④ 退院まで担当した症例である場合、患者の症状及び措置入院が解除となる者の要件を踏まえ、措置入院の継続が不要と判断された理由が記載され、その内容に妥当性が認められるか。

※措置解除の例文:〇年〇月〇日、指定医が診察し、幻覚妄想状態は改善しており、自傷他害のおそれがなくなったと判断された。同日、病院管理者より、最寄りの保健所長を経て、(都道府県知事または政令指定都市市長)へ措置入院者の症状消退届が提出され、〇年〇月〇日付で(都道府県知事または政令指定都市市長)による措置入院の退院が決定された。(以下、医保に切り替えた場合)本人に対し措置入院が退院となったことを告知した。引き続き医療及び保護のため入院治療が必要と判断したが、依然として病識は欠如しており、本人から入院の同意が得られなかったため、同日、(家族等)の同意を得て医療保護入院とした。

⑤ 2024年(令和6年)3月31日以前に入院が行われ同年4月1日以 後も引き続き入院している者又は同日以後に入院が行われた者の場合、

・退院後生活環境相談員が選任されているか。

・病院において、措置入院者又はその家族等からの求めがあっ た場合その他必要があると認められる場合には、これらの者に対して、地域援助事業者の紹介が行われているか。

※退院後生活環境相談員の例文:速やかに精神保健福祉士を退院後生活環境相談員として選任し、早期の地域移行に向けた支援体制を整えた。

※地域援助事業者の例文:地域援助事業者の紹介を提案し患者が希望したため、〇などの地域援助事業者を紹介した。(地域援助事業者を紹介しなかった場合)地域援助事業者の紹介を強く提案したが、患者が拒否したため、地域援助事業者の利用には至らなかった。


医療保護入院


⑥患者の症状及び医療保護入院の対象となる者の要件を踏まえて医療保護入院を行う必要性が記載され、その内容に妥当性が認められるか。

⑦患者が、精神保健福祉法第5条第1項に規定する精神障害者であるか(国際疾病分類(ICD)に該当する精神障害を有しているか)。

⑧患者が、医療及び保護のために入院の必要があるか。

コメント(⑥⑦⑧):本来、入院は最後の手段であり、入院が必要ということは、他に手段がないということです。通院治療など入院以外の代替手段が可能な場合は入院を控えるべきです。たとえば「部屋の壁に自らの頭を打ちつけるなど自傷が続き自宅で保護することが難しかった」「幻覚妄想状態が続くも本人は通院治療を拒否していた」など、審査側が医療保護入院やむなしと思えるような症例を選択し、現病歴にも入院が必要な症状を明確かつ簡潔に記載してください。

⑨患者が、その精神障害のために任意入院が行われる状態にないか(本人に病識がない等、入院の必要性についてその精神障害のために本人が適切な判断をすることができない状態にあるか)。

⑩本人に対して入院医療の必要性等について十分な説明を行い、 その同意を得て、任意入院となるよう努めているか。

⑪退院まで担当した症例である場合、患者の症状及び医療保護入院の対象となる者の要件を踏まえ、医療保護入院の継続が不要と判断された理由が記載され、かつ、その内容に妥当性が認められるか。

⑫2014年(平成26年)4月1日以後に入院が行われた者の場合、入院措置が行われた者に対して、退院後生活環境相談員が選任されているか。

⑬2023年(令和5年)4月1日以後に入院が行われた者の場合、 入院措置を採る旨の告知は、患者本人及び同意を行った家族等に対して行われており、かつ、告知内容に当該入院措置を採る旨及びその理由が含まれているか。

⑭2024年(令和6年)4月1日以後に入院が行われた者の場合、入院時に3ヶ月を超えない範囲で入院期間を定めているか。


※医療保護入院診察時の例文:精神保健指定医(以下、指定医)の診察に同席した。(現症を記載)。入院の必要性を本人に説明したが、病識が欠如しており、入院の同意が得られなかった。やむを得ず(家族等)の同意を得て、◯年〇月〇日医療保護入院とした。指定医は、医療保護入院となる事及び入院措置を採る理由、治療上必要であれば行動制限を行う事、信書の発受および人権擁護に関する行政機関の職員や弁護士との電話、面会は制限されない事、退院や処遇改善等の請求に関することを口頭及び書面にて本人および家族に告知した。その旨を診療録に記載、署名した。◯年◯月〇日、(家族等)の同意書を添えて医療保護入院届を最寄りの保健所長を経て(都道府県知事または政令指定都市市長)に提出した。 また、速やかに精神保健福祉士を退院後生活環境相談員として選任し、早期の地域移行に向けた支援体制を整えた。

※令和7年以降の入院の場合:3ヶ月を超えない範囲で入院期間を定めた。

⑮2024年(令和6年)3月31日以前に入院が行われ同年4月1日以 後も引き続き入院している者又は同日以後に入院が行われた者の場合、

・ 病院において、医療保護入院者又はその家族等からの求めがあった場合その他必要があると認められる場合には、これらの者に対して、地域援助事業者の紹介が行われているか。

・入院期間の更新については、指定医によって入院継続の必要があると判断され、かつ、医療保護入院者退院支援委員会にて審議が行われた場合に限り、家族等の同意がされているのか等の要件を確認した上で、法定の範囲内で期間を定めて入院期間の更新が行われているか。

コメント:地域援助事業者については措置⑤の例文参照。


※医療保護入院者退院支援委員会の例文:〇年〇月〇日、医療保護入院者退院支援委員会を開催したが、(残存する症状を記載)などを理由に指定医は患者がまだ退院できる状態にないと判断し、(家族等)の同意を得て、入院期間を〇年〇月〇日まで延長した。


18歳未満の症例

⑯患者の年齢、発達段階および児童思春期の心理的特性に配慮して関わり、治療するよう努めているか。

⑰患者の発育発達歴、養育環境、就労・就学状況等を把握し、保健福祉等の支援の必要性を検討し、必要に応じて関係機関との連携を図っているか。 

コメント:未成年の症例では、学校や児童相談所などの連携を図った症例を用いてください。単に未成年だっただけでは症例として不十分です。


任意入院に移行した症例


⑱措置入院者又は医療保護入院者が、措置入院又は医療保護入院の要件はなくなったが、入院継続の必要性がある場合、本人に対して入院医療の必要性等について十分な説明を行い、その同意を得たうえで、可能な限り早期に任意入院に移行できるよう努めているか。


任意入院移行の例文:(症状改善の経過を記載)患者は病識を獲得し、治療に対する理解も得られた。本人に任意入院の説明を行ったところ、入院継続を希望されたため、指定医と協議の上、〇年〇月〇日、医療保護入院を退院とした。同日、本人に、自らの意思による任意入院である事、退院の申し出により退院できるが必要があれば退院を制限される事、治療上必要あれば行動制限を行う事、信書の発受および行政機関の職員や弁護士との電話や面会は制限されない事、退院や処遇改善等の請求に関する事を本人に書面で告知した上で任意入院とした。〇年〇月〇日、病院管理者は最寄りの保健所長を経て医療保護入院の退院届を最寄りの保健所長を経て政令指定都市市長(または都道府県知事)に提出した。

⑲退院制限を行った場合、患者の症状及び退院制限の要件を踏まえ、退院制限の理由、期間及びその後に採った措置が記載され、その内容に妥当性が認められるか。  

※ 指定医(特定医師)による診察の結果、医療及び保護のため入院を継続する必要があると認めたときに72時間(特定医師の場合は12時間)に限り実施可能。

コメント:退院制限の理由は医療保護入院と同等の内容が必要です。


退院後に外来治療を行った症例 


⑳退院前に退院後の患者に対する保健福祉等の支援や関係機関との連携の必要性を検討し、評価しているか。



<行動制限に関する事項> 

共通事項

①行動制限を行った場合に、患者の症状を踏まえ、行動制限の種類、開始・解除の日時及び開始・解除の判断理由が記載され、その内容に妥当性が認められるか。※ 電話・面会の制限については日時の記載は求めない。

②行動制限は、医療又は保護に欠くことができない限度において行われているか(患者の症状に応じて最も制限の少ない方法により行われているか)。


電話・面会の制限


③制限を行わなければ病状の悪化を招き、あるいは治療効果を妨げる等、医療又は保護の上で合理的な理由がある場合に行われているか。

④合理的な方法及び範囲における制限であるか。


隔離


⑤患者の症状からみて、

・ 本人又は周囲の者に危険が及ぶ可能性が著しく高く、

・ 隔離以外の方法ではその危険を回避することが著しく困難で あると判断される場合に、

・ その危険を最小限に減らし、患者本人の医療又は保護を図ることを目的として行われているか。

⑥隔離以外によい代替方法がない場合において行われているか。

⑦隔離の対象となる患者が、次のような場合に該当すると認められるか。

ア他の患者との人間関係を著しく損なうおそれがある等、その言動が患者の病状の経過や予後に著しく悪く影響する場合 

イ自殺企図又は自傷行為が切迫している場合

ウ他の患者に対する暴力行為や著しい迷惑行為、器物破損行為が認められ、他の方法ではこれを防ぎきれない場合

エ急性期精神運動興奮等のため、不穏、多動、爆発性などが目立ち、一般の精神病室では医療又は保護を図ることが著しく困難な場合

オ身体的合併症を有する患者について、検査及び処置等のため、 隔離が必要な場合


身体的拘束


⑧身体的拘束以外によい代替方法がない場合において行われているか。

⑨身体的拘束の対象となる患者が、次のような場合に該当すると認められる患者であるか。

ア自殺企図又は自傷行為が著しく切迫している場合

イ多動又は不穏が顕著である場合

ウア又はイのほか精神障害のため、そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれがある場合

⑩できる限り早期に他の方法に切り替えるよう努めているか。


任意入院者の開放処遇の制限


⑪任意入院者の症状からみて、その開放処遇を制限しなければその医療又は保護を図ることが著しく困難であると医師が判断する場合にのみ行われているか。

⑫開放処遇の制限の対象となる任意入院者が、次のような場合に該当すると認められる患者であるか。

ア他の患者との人間関係を著しく損なうおそれがある等、その言動が患者の病状の経過や予後に悪く影響する場合

イ自殺企図又は自傷行為のおそれがある場合

ウ当該任意入院の病状からみて、開放処遇を継続することが困難な場合



 
 
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