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休職から復職までの方法とステップ

  • 斎藤知之
  • 5月1日
  • 読了時間: 9分

精神的な問題で休職してから復職(職場復帰)するまでのステップを解説します。


休職から復職までのステップ

休職した後にどうしたらよいか分からない人や復職できるか不安な人は多いと思います。厚労省が発行する「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を見ると、休職から復職までの流れは以下の4ステップで解説されています。当院のやり方を踏まえて、各ステップについて簡単に説明します。



ステップ1:休職開始及び休職中のケア


まずは休職(病気休業)の開始について説明します。職場の就業規則等によりますが、精神科・心療内科の医療機関で、精神症状のため仕事が続けられないこと(労務不能)が書かれた診断書をもらい、それを職場に提出することで休職が始まることが一般的です。職場によって、休職の最長期間が決められている場合もあるので、それを担当者に確認してください。


ただし、できるなら、受診前に精神状態が悪いことを上司や人事担当者に伝えておく方が良いです。その時点で職場としては何らかの配慮や対応をすることが多いからです。そうすれば休職せずとも良くなる場合もあります。また、たとえ休職するとしても、あらかじめ職場に復職する時の制度、配慮などを確認しておくことがオススメです。


たとえば、職場として、メンタル不調の従業員のために、ストレスの多い業務を避ける配慮をしたり、時短勤務、時差出勤、在宅勤務などの制度を用意していることがあります。これは、両立支援とも呼ばれる制度で他の記事で解説していますので、その記事をご覧ください。



休職したら、まずは治療に専念し、休養をとることが大切です。投薬が必要になる場合もあるので、医師の指示に従ってください。


※傷病手当について

休職中はお金が心配な方も多いと思います。会社によっては数ヶ月間は給与を支給するところもありますが、無給の場合が多いと思います。職場の社会保険に加入している方は、休職中の期間、傷病手当を申請できます。これは、給与の2/3が保障されるもので、特定の用紙を職場からもらい、通院している医療機関に記載してもらいます(通院が途絶えると記載できないので気をつけてください)。なお、傷病手当をもらうのには時間がかかるという問題は知っておいてください。傷病手当は過去の期間において申請するものですから、一定期間が過ぎないと申請できず、保険組合の審査もあるため、休職してから振り込まれるまで数ヶ月かかることも珍しくありません。


ステップ2:主治医による復職の判断


症状が落ち着いてからはリハビリしたり、復職を検討したりする段階に入ります。ただ休み続けるだけでは復職することが難しくなるので、リハビリが大事なことを知っておいてください。


復職できると判断するには、症状が良くなったことだけでは足りず、業務遂行能力、つまりは仕事の能力が回復したという事実が必要になります。ここは誤解の多い所ですが、単に精神的に安定しているというだけではなく、以前同様に働くことができるかがポイントになります。たとえば、主に以下のようなものが復職判断のポイントになります。


  • 生活リズムは整っているか?

  • 遅刻しない時間に起きれるのか?

  • 昼間の眠気が無いか?

  • 通勤はできるか?

  • 仕事をする体力はあるか?

  • ずっと集中力を保てるか?


生活リズムや活動量を確認するため行動記録表という学校の時間割のようなものを書いてもらうこともあります。


仕事の能力を回復させるためには、治療や休養だけでは足りません。以下のようなリハビリや訓練が必要です。


  • 通勤訓練:自宅から職場近くまで通勤する練習をする。

  • 模擬出勤:図書館で本を読んだり、自宅でパソコンを操作したりなどの軽作業を行う。

  • 試し出勤:本来の職場などに一定期間継続して出勤する 。

  • リハビリ勤務:職場で軽い作業を行う。


こうしたリハビリは自分だけで行っても良いのですが、リワーク施設を利用することもできます。就労移行支援事業所の中にはリワーク施設として利用できるところがあります。また、当院にはありませんが、クリニックによってはリワーク・デイケアを併設しているところもあります。


リハビリができれば、業務遂行能力が回復したと判断できます。逆に、いくら気持ちが落ち着いていても、リハビリに取り組めていない場合、復職できるか判断できません。リハビリは復職の判断材料としても重要です。


リハビリを経て、業務遂行能力が回復したら、主治医が職場復帰可能と判断します。そして、主治医が書面(意見書、両立支援カードなど)に復職が可能であることを記入しますので、休職者はその書面を職場に提出してください。


ステップ3:復職の可否の判断及び復職支援プラン


復職は主治医だけが判断するものではありません。主治医から復職可能の判断が下りたら、次に職場の担当者や産業医とも復職の可否について話し合います。多くの会社では、産業医が関わり、本当に職場復帰可能か判断します。先述した試し出勤、リハビリ勤務などのリハビリについては産業医面談後に始まる場合もあります。


その後、上司(管理職)や人事担当者らと休職者が話し合い、どのような配慮・制度を活用するのかも考えつつ、職場復帰への具体的なスケジュールを決めていきます。復職後1~3ヶ月程度は業務負担軽減のための配慮をもらうことが多いです。また、復職後も通院が継続できるように、通院日には早めに帰宅するなどの配慮をもらうことも大事です。


まれに職場内にハラスメントが発生している場合もあります。この場合、職場側がハラスメントを防ぐよう対策しなければなりません。復職後にハラスメントを受けたら、精神的に悪化するのは目に見えています。復職前に、ハラスメントを防ぐ対策を職場側に求めてください。もしも、職場がハラスメントを防ぐ対策をしない場合は、法律に違反する可能性もありますから、労働局などにご相談ください。



ステップ4:最終的な復職の決定


以上のステップを踏まえて、最終的に会社側(事業者)が復職について判断を下します。医師が最終判断すると誤解している人も多いのですが、最終判断の権限はあくまで職場にあります。そのため職場との話し合いが重要になります。


また復職したらおしまいというわけではなく、その後も再発予防の対応が必要になります。精神疾患はとても再発しやすいものです。定期的に上司や人事担当者、産業医などと面談し、症状が悪化していないことを報告していきます。また、精神疾患には、再発を防ぐ治療があります。これを維持療法と呼びます。自己判断で通院を中止することなく、再発のリスクが高い期間は、維持療法を継続していくことが重要です。


上司が知っておくべきこと


以下は、復職する職員を受け入れる側の人(上司/管理職/人事担当者など)の対応のモデルを記載します。


まずは、同じ職場で働く方々も、精神疾患について知ることから始めます精神疾患を理解するために、生物・心理・社会モデルという考え方があります。これは、精神疾患の原因を生物学的要因、心理学的要因、社会的要因に分けて考える手法です。


例えば、残業が多いとか、職場環境が悪いといったことは社会的要因です。ただ、他にも社会的要因はあります。家庭環境の問題で、夫婦仲が悪いとか、親子関係のトラブルという場合もあるでしょう。介護が関係する可能性もあります。介護負担による離職、いわゆる介護離職は社会問題化しています。


心理学的要因には、本人の価値観や性格的な要因、知的な能力などがあります。心理学的要因は社会的要因に関係が深いため、両者をまとめて心理社会的要因とする言い方もあります。


生物学的要因には、例えば遺伝的、先天的な要因があります。統合失調症や双極性障害、発達障害などは遺伝的、先天的な要因が強い精神疾患です。また、悪性腫瘍・癌、心疾患などの身体疾患は、精神疾患と密接に関係します。ホルモンの病気や免疫の病気、脳の病気などが精神疾患を直接的に引き起こすこともあります。


精神疾患について理解するには、原因を一つに決めつけず広い視野で考えることが大事なのです。


オーストラリアには、”RESPECT Manager Mental Health Training RESPECT Manager Mental Health Training”というマニュアルがあります。これは、会社の上司、管理職などマネージャーレベルの役職の人に向けたプログラムで、休職した職員への対応が書かれています。また、精神疾患について知ること以外にも周囲が関われる方法はあります。


このプログラムでは、職場の上司は、病気について基礎的な説明を受けた後、休職した職員とのコミュニケーションの方法を学びます。コミュニケーションでは7つのポイントを説明するのですが、それぞれの頭文字をとってRESPECTと語呂合わせを作っています。以下に、本文からの抜粋を私の意訳を添えて記載します。

  • "Regular contact is essential."(定期的な連絡が必要)

  • "Earlier the better."(連絡を取るなら早くした方が良い)

  • "Supportive and empathetic communication."(優しく支えるような、かつ、思いやりをもったコミュニケーションを心がける)

  • "Practical help, not psychotherapy."(専門的な心理カウンセリングじゃなく、現実的な援助が大事)

  • "Encourage help-seeking."(専門家に相談することを勧める)

  • "Consider Return to Work options."(職場に復帰するという選択肢について一緒に考える)

  • "Tell them the door is always open and arrange next contact."(いつでも戻ってきて良いことを伝え、次のアポイントメントを取る)

このRESPECTは、決して専門的ではなく、誰でも可能な方法だと思います。オーストラリアでは、実際にこのプログラムを運用したところ、職場の休職者が減るなどの良い効果が得られたという研究結果があるそうです。


復職は本人だけの努力に任せてもうまくいきません。職場環境の調整や、上司、同僚の理解・サポート・コミュニケーションが必要になります。上記のプログラムを参考に、周囲の方も考えてみてください。


よりどころメンタルクリニック桜木町では、メンタルの問題や精神疾患による休職をサポートしています。休職についてお悩みの方は、当院までお気軽にご相談ください。


参考文献・サイト:

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