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なにが精神症状なのか

  • 斎藤知之
  • 2025年12月16日
  • 読了時間: 12分

更新日:2025年12月24日

なにが精神症状なのか

心療内科や精神科がどのような症状を診察したり治療したりするのか知らない人は多いと思います。心療内科や精神科で対応する症状を知るためには、精神症状とはそもそもなんなのかを知る必要があると思います。ここでは、なにが精神症状なのか知るために、精神症状やそれに関連する症状の一覧をご紹介します。心療内科や精神科を受診するうえでの参考にしてもらえたら幸いです。


目次


精神症状を考えるときのポイント


まずは精神症状を考えるうえで大事なポイントをお伝えします。


人間、誰にでも喜怒哀楽があります。落ち込んだり不安になったりしたことがない人はいません。マイナスの感情をすべて病的な精神症状だと捉えていたら、全員病気になってしまいますから、そのようなことはしません。たとえば落ち込んだり、悲しい気持ちになったりしたとしても、軽いものや一時的なものは正常と判断されます。病的な精神症状だと判断されるには、重症度が大事です。精神症状のせいで、今までできていた仕事や家事ができなくなる、生活や健康に問題が生じるなど、今までと比べて明らかに異常な状況となった時に病的な「症状」だと判断されます。


精神症状を医師に伝えるときのポイント


症状の経過


もしも生活や健康に支障が出るレベルの精神症状がある場合、心療内科や精神科への受診を考えることになると思います。初回の診察の時、医師に症状を伝えるうえでの大事なポイントは症状の時間や経過を伝えることです。その症状はいつから始まったのか、朝から晩までずっと続くのか発作的なものであれば何分ほどで収まるかなどを医師に伝えてください。時間や経過により症状の持つ意味や診断が変わってきます。症状の時間や経過について詳しく医師に伝えてください。また、どのような状況や場面で症状が出るのかも重要になってきます。きまって症状が出る場所や場面があれば、それも医師に伝えてください。


自分の言葉で


これも大事なポイントですが、医師に精神症状を伝えるときは、専門用語やネットで見た用語を使わず自分の言葉で表現してください。ここでは専門用語を紹介するので矛盾するようですが、専門用語は略語のようなもので、とても抽象的です。専門用語では具体的にどういうことなのか伝えられません。医師には具体的に症状を伝えることが大事ですので、専門用語を使うよりも自分の言葉を使う方が良いのです。


精神疾患の症状一覧


ここからは症状を細かく並べていきます。精神的な症状は、必ずしも感情の問題だけではありません。行動の変化だったり、判断能力の問題や、知的な能力の問題も精神症状としてとらえます。さらに、精神疾患ではからだの症状が出ることも知っておくべきだと思います。それでは、以下に項目ごとに症状を列挙していきます。


感情の症状


まずは感情や心の動きに関する症状から挙げていきます。


抑うつ状態(うつ症状)


うつとは、たとえば以下のものを言います。

  • 気分が落ち込む。

  • 悲しい気持ちになる。

  • 何にも興味がわかない。

  • 自分を責めてしまう。

  • 死んでしまいたいと思う。


うつの症状は持続時間が特に大事になります。うつ病の場合は抑うつ症状が2週間以上、ほぼ毎日、朝から晩まで続きます。もっと短い期間の症状であれば、他の診断(たとえば適応障害など)になります。



躁状態(躁病)


躁状態(そうじょうたい)とは、うつ状態とは逆にとても行動的になる精神症状です。たとえば以下のようなものがあります。

  • 気分が高揚する(テンションが上がる)。

  • 活動的になる。

  • 怒りっぽくなる。

  • 自信がわいてくる。根拠もなく自信過剰になる。

  • お金を使いすぎる(浪費)。

  • いろいろなアイディアが浮かんでくる。

  • 目標がとても高くなる。

  • 社交的になり、よく話すようになる。

  • 眠気が減り、睡眠を減らしても疲れなくなる。


こうした躁状態が4日以上続くと双極症(双極性障害)の可能性が出てきます。双極症では、うつ状態と躁状態が繰り返し再発し続けます。



不安、恐怖、緊張


不安、恐怖、緊張はだれにでもあることなので、とても症状が強いとか、場にそぐわない不合理なものの場合に異常な症状ととらえます。たとえば、ただ電車に乗るだけなのに異様に強い不安がおそってくるなどは病的ととらえます。また、強い不安、恐怖、緊張などの感情は自律神経を通じて動悸や発汗などのからだの症状を引き起こすこともあります。こうしたからだの症状についてはあとで記載します。


不安、恐怖、緊張に関連する精神疾患には、不安症と呼ばれるカテゴリーのパニック症(パニック障害)、社交不安症(社交不安障害)、全般性不安症(全般性不安障害)などがあります。ただし、うつ病や双極症、統合失調症など多くの精神疾患で不安は強まるので、特異性のない症状でもあります。



行動パターン


強迫


あるイメージや考えが繰り返し浮かぶものを強迫観念と言います。また、それを打ち消すために同じ行動を繰り返すものを強迫行為と呼びます。このように繰り返す考えや行動を強迫症状と呼びます。たとえば、なにかが不潔だと繰り返し考え、そのために何度も手を洗うなどが典型的な強迫症状です。


強迫観念や強迫行為が続くものを、強迫症(強迫性障害)と呼びます。ただ、性的な考えの強迫観念だったり、統合失調症の方に強迫的な繰り返し行為が見られる場合もあります。


関連ページ:強迫性障害


依存


依存もくりかえす行動をやめられないという意味で強迫に近い症状です。だれでも何かに依存していますが、精神症状としての依存とは、明らかに問題が起こっているのにやめられない状態を指します。たとえば、アルコールによって健康を大きく損なっているのにやめられないとか、違法薬物の使用をやめられないような状態です。買い物依存やゲーム依存などの言葉もありますが、これは過剰に使われる傾向にあります。病的な依存というからには、それが本当に問題となっているのか慎重に判断しなければなりません。買い物やゲームのやりすぎが、その人の生活や人生にとって問題となるほどのレベルに達しているのかどうかを考えます。たとえ、買い物やゲームの量が他人より多いとしても、明らかに有害と言えないレベルであれば、依存とは言いません。


攻撃性


他人に対して悪口を言ったり、怒鳴ったり、暴力を振るったりと攻撃的になる人もいます。これは元々の性格や考え方が原因の場合もあれば、躁状態や幻覚などの精神症状が原因の場合もあります。原因となる精神症状を治療すると攻撃性も減ってきます。ただ、元々の性格や考え方が攻撃性の原因の場合、すぐに攻撃性が減ることはありません。


知覚感覚の障害


感覚過敏


精神的な緊張が高まると、聴覚が過敏になる方は多いです。その他、触覚や嗅覚が過敏になる方もいます。感覚過敏は多くの精神疾患で見られる症状で、発達障害の方でも感覚過敏を抱えている方がいます。よくある症状のため、特異性はないです。


ヒステリー球


不安やストレスなどにより、喉にかたまりがある感じが出ることがあり、ヒステリー球と呼ばれます。自律神経症状とも関係する症状です。これも不安症をはじめ、多くの精神疾患で出ることがあります。


幻覚


幻覚とは、実際にはないのに知覚してしまう症状です。統合失調症や双極症、重度のうつ病など、かなり重度の精神疾患にしか見られない症状です。幻覚の中では、誰もいないのに人の声が聞こえるという幻聴がもっとも多いです。幻視としては、実際にはいない人、動物、虫などが見えるものがあります。また、臭いの幻覚である幻臭や、皮膚に虫がはっている感じがするなどの体感幻覚というタイプの幻覚もあります。認知症の中には、幻視が特徴的なレビー小体型認知症というものもあります。レビー小体型認知症はパーキンソン病と同じカテゴリーの脳神経の病気です。



思考の障害


思考の障害は後で説明する認知機能とも密接に関わり、同じものを指す場合もありますが、一応区別して説明します。


妄想


精神症状としての妄想は想像や空想とは区別します。精神症状としての妄想とは、誤った確信を抱く状態のことをさします。たとえば、なんの根拠もなく自分が誰かから狙われていると確信してしまい、他の人がいくらそうではないと言っても聞かないような状態です。たとえば、事実とは言えないのに、自分が他人から悪口を言われていると確信する被害妄想、自分がなにか罪を犯したと思いこむ罪業妄想、重い病気にかかっていると思いこむ心気妄想、自分がすごい人間だと思いこむ誇大妄想などがあります。確信にはいたっていないけれども、根拠もなくそう思うような状態は、念慮といって妄想とは区別します(例:被害念慮)。妄想も重度の精神疾患にしか見られないまれな症状です。統合失調症、妄想性障害、重度のうつ病や双極症などに出現します。また認知症や一過性のせん妄という状態でも妄想が出ることがあります。



滅裂思考


滅裂思考とは、考えがバラバラでつながりが無くなる状態を指します。これは会話の内容を聞けばわかります。滅裂思考の人の話は、主語と述語がつながっていなかったり、脈絡のない発言が続いたり、一文一文が無関係だったりして、聞いていてもなんの話だか理解できません。文法が間違っていることもあります。統合失調症や重度の躁状態などで見られる症状です。



思考制止


思考制止とは、主にうつ病で見られますが思い通りに考えられなくなったり、思考の進み方が鈍くなる、あるいは停止する状態を指します。頭がはたらかなくなり、「考えがまとまらない」「決められない」といった状態です。思考抑制とも言われます。


関連ページ:うつ病


心と関係するからだの症状


精神疾患ではさまざまなからだの症状、身体的な症状があります。


睡眠障害


寝付けないことを入眠困難、夜中に覚醒することを中途覚醒と呼びます。睡眠障害は非常に多くの精神疾患で見られる症状です。なお、精神疾患だけではなく、レストレスレッグ症候群(むずむず脚症候群)で入眠困難が出たり、睡眠時無呼吸症候群で中途覚醒が出る場合もあります。また、寝ても寝ても眠い、睡眠時間が異様に延びる過眠も症状です。過眠は、双極症(双極性障害)のうつ病相でよく見られますが、睡眠時無呼吸症候群の症状としても有名です。また、まれな病気ですが、ナルコレプシーという神経疾患の方でも過眠になります。




食欲の異常


多くの精神疾患では食欲が減ります。うつ病や双極症では食欲の低下がかなり強く出ることが多いですが、過食する場合もあります。過剰なダイエットや体型の違和感などにより摂食障害になると、食欲を感じなくなったり、急に過食したりすることがあります。



倦怠感・疲労感


うつ病では、全身の倦怠感・疲労感などが続くことがあります。かぜをひくだけでも倦怠感・疲労感は強まりますし、たいていの病気で出る症状ですから、これだけだと見分けがつきません。うつ病の他の症状がないのか確認したり、からだの異常はないのか検査したりして見分けていきます。


関連ページ:うつ病


自律神経症状


自律神経とは血管や内臓を無意識にコントロールする神経です。内臓神経と呼ばれることもあります。交感神経と副交感神経に分かれ、両者がバランスをとっています。強い不安や怒りなどの感情は自律神経に影響して自律神経症状を出します。自律神経症状はたくさんあります。たとえば、動悸(心拍数の増加)、息苦しさ(息を吸っても吸った気がしない)、吐き気、下痢、手のしびれ、手が冷たくなる、汗が出るなどが自律神経症状です。自律神経症状も非常に多くの精神疾患で見られます。



運動機能の障害


精神的な症状で、手が動かなくなったり、声が出なくなったりすることがあります。声が出なくなるのは失声(しっせい)とも呼ばれます。こういう場合は、まず体の検査や神経系統の検査が必要になりますが、精神的な症状の場合、検査に異常が出ません。


認知機能


知的な能力は認知機能とも呼ばれ、精神機能の一つとして扱われます。認知機能にはたくさんのものが含まれます。たとえば、記憶力、計算能力、注意を持続する力、ものごとを順番に計画する力、論理的に考える力、想像力、言語能力、コミュニケーション能力などが認知機能です。認知機能に関わる疾患は、発達障害や認知症です。幼い頃、認知機能が正常に発達しなかった場合を発達障害と言います。一方、ある程度、認知機能が成長してから、認知機能に障害が出た場合、認知機能障害と言います。知的な能力や認知機能の障害は改善が難しいのですが、最近では注意欠陥多動障害(ADHD)の改善薬や、認知症の進行を遅らせる薬があります。


発達障害


発達障害には知的障害(精神遅滞)、注意欠陥多動障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害があります。知的障害は、学校の成績に影響していることが多く、すでに子供の頃に判定されていることが多いのですが、注意欠陥多動障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害は子供の頃に診断されていないことも少なくありません。注意欠陥多動障害(ADHD)は、子供の頃から注意を持続する力、ものごとを順番に計画する力、衝動を理性的に抑える力などの認知機能が発達しなかったものを言います。自閉症スペクトラム障害では、他人の感情についての想像力、コミュニケーション能力などの社会的認知機能が発達しなかったものを言います。なお、発達障害はナイーブで神経過敏な人のことだと誤解している人が多いのですが、あくまで能力の障害だと理解してください。



認知機能障害


認知機能障害が出る代表的な病気は、認知症や頭部外傷などですが、精神疾患でも軽い認知機能障害が出ることが多いです。たとえば、統合失調症の中にも、注意力や言語能力などの認知機能に障害が出る人がいます。

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