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なにが精神症状なのか

斎藤知之
3 日前
読了時間: 14分

更新日:18 時間前

なにが心の病気の症状(精神症状)なのか知らない人は多いと思います。しかし、精神症状が分からないと、心療内科や精神科が何を治してくれるのかも分かりません。


そこで、ここでは心の病気・精神疾患の症状や関連症状の一覧を示します。少し長くなりますが、自分に当てはまる症状がないか確認し、心療内科や精神科を受診する時の参考にしてください。


なにが精神症状なのか

目次


精神症状を考えるときのポイント


まずは精神症状を考えるうえで大事なポイントをお伝えします。


だれでも時にマイナスの感情をいだくことがあります。マイナスの感情をすべて病気だと考えていたら、世の中の人すべてが病気になってしまいますから、そのように考えません。たとえば落ち込んだり、悲しい気持ちになったりしたとしても、軽いものや一時的なものは正常なこころの動きと判断されます。病的な精神症状だと判断するには、重症度や持続期間が大事です。精神症状のせいで、今までできていた仕事や家事ができなくなる、生活や健康に問題が生じるなど、今までと比べて明らかに異常な精神状態が一定期間続いた時に病的な症状だと判断されます。


精神疾患の症状一覧


ここからは症状を細かく並べていきます。精神的な症状は、必ずしも感情の問題だけではありません。行動の変化だったり、判断能力の問題や、知的な能力の問題も精神症状としてとらえます。さらに、精神疾患ではからだの症状が出ることも知っておくべきだと思います。それでは、以下に項目ごとに症状を列挙していきます。


感情の症状


まずは感情や心の動きに関する症状から挙げていきます。


抑うつ状態(うつ症状)


抑うつ状態(よくうつじょうたい)とは、うつの症状のことで、たとえば以下のものを言います。


  • 気分が落ち込む。

  • 悲しい気持ちになる。

  • 何にも興味がわかない。

  • 自分を責めてしまう。

  • 死んでしまいたいと思う。


こうした症状は持続時間が大事になります。うつ病の場合は抑うつ状態が2週間以上、ほぼ毎日、朝から晩まで続きます。もっと短い期間の症状であれば、他の診断(たとえば適応障害など)になります。



躁状態(躁病)


躁状態(そうじょうたい)とは、抑うつ状態とは逆にとても活動的になる精神症状です。たとえば以下のようなものがあります。


  • 気分が高まる(テンションが上がる)。

  • 活動的・行動的になる。

  • 怒りっぽくなる。

  • 自信がわいてくる。根拠もなく自信過剰になる。

  • お金を使いすぎる(浪費)。

  • いろいろなアイディアが浮かんでくる(観念奔逸)。

  • 目標がとても高くなる。

  • 社交的になり、よく話すようになる。

  • 眠気が減り、睡眠を減らしても疲れなくなる。


こうした躁状態が4日以上続き、症状が比較的軽い場合を軽躁状態と呼びます。躁状態が7日以上続き、程度が重い場合を躁状態と呼びます。ただ、軽躁状態なのか躁状態なのかを明確に分けることは難しいので、治療上ではこの区別はあまり重視されません。躁状態と抑うつ状態の両方の経験がある場合、双極症(双極性障害)の可能性が出てきます。双極症では、うつ状態と躁状態が繰り返し再発し続けます。



不安、恐怖、緊張


不安、恐怖、緊張はだれでも感じるものなので、とても症状が強いか、場にそぐわない不合理な場合に異常な症状ととらえます。たとえば、ただ電車に乗るだけなのにとても強い不安がおそってくるなどは場にそぐわない不合理な不安ですから病的と考えます。また、強い不安、恐怖、緊張などの感情は自律神経を通じて動悸(どうき)や発汗など様々なからだの症状を引き起こすことがあります。


不安、恐怖、緊張に関連する精神疾患には、不安症と呼ばれるカテゴリーのパニック症(パニック障害)、社交不安症(社交不安障害)、全般性不安症(全般性不安障害)などがあります。ただし、うつ病や双極症、統合失調症など多くの精神疾患で不安は強まるので、特異性のない症状でもあります。


特定の恐怖・限局性恐怖


高いところが怖い、虫が怖い、針が怖いなど、特定のものが怖いという人は多いです。これがあまりに強く生活に支障が出ているようだと、特定の恐怖症(限局性恐怖症)と呼ばれます。こうした恐怖症の治療も、パニック症(パニック障害)と同じく、暴露療法やSSRIなどが有効です。



広場恐怖


広場恐怖は、特定の場所や空間に対する恐怖です。たとえば、バスや電車などの公共の乗り物、広い場所、囲まれた場所、人混みなどがとても怖くなります。乗り物恐怖症や閉所恐怖症と考えた方が分かりやすいかもしれません。パニック症にともなうことが多い症状です。



病気不安・心気症


自分が重い病気ではないかと考えて不安になるものを、病気不安とか心気症と呼びます。いくら検査しても異常はないのに病気の不安が半年以上にわたって続くような場合、病気不安症・心気症などと診断されます。これがさらに強まり、いくら検査しても異常はないのに自分は重い病気に違いないと確信してしまうものを心気妄想と呼びます。心気妄想は重度のうつ病で見られる症状です。


社交恐怖


大勢から注目されることへの恐怖、人前に立つことへの恐怖を言います。これが強まり社会生活に支障をきたすようになると社交不安症の可能性が出てきます。対人恐怖と言う場合もありますが、誰に対しても恐怖をいだくわけではなく、複数人から見られるような場面だけが怖いことが多いです。これは、統合失調症で見られる視線恐怖とは区別する必要があります。


関連ページ:社交不安症


視線恐怖


統合失調症で見られる視線恐怖は、誰からも見られている気がする、人の視線が怖いというものです。社交不安症とは違い、対象は広範囲におよび、誰に対しても恐怖心をいだく傾向があります。たとえば、道を歩く通行人など、全く無関係な人からも見られている気がして怖いと思うようになります。さらに、誰もいないのに見られている気がするという妄想も一緒になることが多いです。


関連ページ:統合失調症


不潔恐怖


不潔なものへの強い恐怖心を言います。このために何度も手を洗ったり、何度も消毒したりというように、くり返しの行動(強迫行為)が出ることもあります。この場合は強迫症(強迫性障害)と呼ばれます。



行動パターン


強迫


あるイメージや考えがくり返し浮かぶものを強迫観念(きょうはくかんねん)と言います。また、それを打ち消すために同じ行動を繰り返すものを強迫行為(きょうはくこうい)と呼びます。このようにくり返す考えや行動が強迫症状です。たとえば、手がきたないと何回も繰り返し考え、そのために何度も手を洗うとか、何度も鍵を閉めたか確認するなどが典型的な強迫症状です。


強迫観念や強迫行為が続くものを、強迫症(強迫性障害)と呼びます。ただし、性的な考えの強迫観念だったり、統合失調症の方に強迫的な繰り返し行為が見られる場合は、違う診断になることがあります。



依存


依存(いぞん)もくりかえす行動をやめられないという意味で強迫に近い症状です。だれでも何かに依存していますが、精神症状としての依存とは、明らかに問題が起こっているのにやめられない状態を指します。たとえば、アルコールによって健康を大きく損なっているのにやめられないとか、違法薬物の使用をやめられないような状態です。買い物依存やゲーム依存などの言葉もありますが、こうした言葉は過剰に使われる傾向にあります。病的な依存というからには、それが本当に問題となっているのか慎重に判断しなければなりません。買い物やゲームのやりすぎが、その人の生活や人生にとって問題となるほどのレベルに達しているのかどうかを考えます。たとえ、買い物やゲームの量が他人より多いとしても、明らかに有害と言えないレベルであれば、依存とは言いません。


攻撃性


他人に対して悪口を言ったり、怒鳴ったり、暴力を振るったりと攻撃的になる人もいます。これは元々の性格や考え方が原因の場合もあれば、躁状態や幻覚などの精神症状が原因の場合もあります。原因となる精神症状を治療すると攻撃性も減ってきます。ただ、元々の性格や考え方が攻撃性の原因の場合、すぐに攻撃性が減ることはありません。なお、診察の時に医師に対して攻撃的な発言をすると、診察を拒否されることがありますので注意してください。


知覚感覚の障害


感覚過敏


不安感や緊張が高まると、聴覚が過敏(かびん)になる方は多いです。聴覚過敏は、小さな物音がとても気になる症状です。その他、触覚や嗅覚が過敏になる方もいます。こうした感覚過敏は多くの心の病気・精神疾患で見られる症状です。また、発達障害の方の中には、子供の頃から感覚過敏を抱えている方がいます。ただし、感覚過敏は発達障害の診断基準ではないので注意してください。


ヒステリー球(のど)


不安やストレスなどにより、喉(のど)にかたまりがある感じが出ることがあり、ヒステリー球と呼ばれます。自律神経症状とも関係する症状です。これも不安症をはじめ、多くの精神疾患で出ることがあります。


幻覚


幻覚とは、実際にはないのにあると知覚してしまう症状で、幻聴、幻視などがあります。幻聴とは、だれもいないのに人の声が聞こえるというもので、幻覚の中では最も多いです。幻視は、実際にはいないのに、人、動物、虫などが見えるるものです。また、臭いの幻覚である幻臭や、皮膚に虫がはっている感じがするなどの体感幻覚というタイプの幻覚もあります。こうした幻覚は統合失調症で見られることが多いですが、双極症、うつ病などでも重症になると幻覚が出る場合があります。また、PTSDや解離性障害でも幻聴が見られることがあります。認知症の中には、幻視が特徴的なレビー小体型認知症というものもあります。



思考の障害


思考の障害は後で説明する認知機能とも密接に関わり、同じものを指す場合もありますが、一応区別して説明します。


妄想


精神症状としての妄想は、想像や空想とは区別します。精神症状としての妄想とは、誤った確信を抱く状態のことをさします。たとえば、事実ではないのに、自分がだれかから狙われていると確信してしまい、他の人がいくらそうではないと言っても聞かないような状態です。妄想には、自分が他人から悪口を言われていると確信する被害妄想、自分がなにか罪を犯したと思いこむ罪業妄想、重い病気にかかっていると思いこむ心気妄想、自分がすごい人間だと思いこむ誇大妄想などがあります。確信にはいたっていないけれども、根拠もなくそう思うような状態は、念慮(ねんりょ)といって妄想とは区別します(例:被害念慮)。妄想は重度の精神疾患にしか見られないまれな症状です。統合失調症、妄想性障害、重度のうつ病や双極症などに出現します。また認知症や一過性のせん妄という状態でも妄想が出ることがあります。



滅裂思考


滅裂思考とは、考えがバラバラでつながりが無くなる状態を指します。これは会話の内容を聞けばわかります。滅裂思考の人の話は、主語と述語がつながっていなかったり、脈絡のない発言が続いたり、一文一文が無関係だったりして、聞いていてもなんの話だか理解できません。文法が間違っていることもあります。統合失調症や重度の躁状態などで見られる症状です。



思考制止


思考制止とは、主にうつ病で見られますが思い通りに考えられなくなったり、思考の進み方が鈍くなる、あるいは停止する状態を指します。頭がはたらかなくなり、「考えがまとまらない」「決められない」といった状態です。思考抑制とも言われます。


関連ページ:うつ病


観念奔逸


観念奔逸とは、次から次へとアイディアや考えがわいてくることを指します。躁状態の症状の一種です。



心と関係するからだの症状


精神疾患ではさまざまなからだの症状、身体的な症状があります。


睡眠障害


寝つけないことを入眠困難(にゅうみんこんなん)、夜中に覚醒することを中途覚醒(ちゅうとかくせい)と呼びます。睡眠障害は非常に多くの精神疾患で見られる症状です。なお、精神疾患だけではなく、レストレスレッグ症候群(むずむず脚症候群)で入眠困難が出たり、睡眠時無呼吸症候群で中途覚醒が出る場合もあります。また、寝ても寝ても眠い、睡眠時間が異様に延びる過眠も症状です。過眠は、双極症(双極性障害)のうつ病相でよく見られますが、睡眠時無呼吸症候群の症状としても有名です。また、まれな病気ですが、ナルコレプシーという神経疾患の方でも過眠になります。



食行動の異常


多くの精神疾患では食欲が減ります。うつ病や双極症では食欲の低下がかなり強く出ることが多いですが、過食する場合もあります。また、太ることに対する恐怖感から過剰なダイエットを続ける場合を摂食障害(神経性無食欲症/神経性やせ症)と呼びます。摂食障害には、たくさん食べて吐くことを繰り返すものもあり、神経性体食症(神経性過食症)と呼ばれます。嘔吐などの痩せるための行動をともなわずに過食する場合は過食性障害と呼びます。なお、睡眠薬の服用後に過食したけど覚えていないというものは、副作用の一種で睡眠関連摂食障害と呼びます。



倦怠感・疲労感


うつ病では、全身の倦怠感(けんたいかん)・疲労感などが続くことがあります。からだが重い、疲れが取れない状態です。ただし、かぜをひくだけでも倦怠感・疲労感は強まります。倦怠感・疲労感はたいていの病気で出る症状ですから、これだけだと精神症状なのか見分けがつきません。うつ病の他の症状がないのか確認したり、からだの異常はないのか血液検査などで確認します。


関連ページ:うつ病


自律神経症状


自律神経とは血管や内臓を無意識にコントロールする神経です。内臓神経と呼ばれることもあります。交感神経(こうかんしんけい)と副交感神経(ふくこうかんしんけい)に分かれ、両者がバランスをとっています。強い不安や怒りなどの感情は自律神経に影響して自律神経症状を出します。自律神経症状はたくさんあります。たとえば、動悸(心臓が速く大きく動く感じ)、息苦しさ(息を吸っても吸った気がしない)、吐き気、下痢、手のしびれ、手が冷たくなる、汗が出るなどが自律神経症状です。自律神経症状も非常に多くの精神疾患で見られます。



運動機能の障害


精神的な症状で、手が動かなくなったり、声が出なくなったりすることがあります。声が出なくなるのは失声(しっせい)とも呼ばれます。こういう場合は、まず体の検査や神経系統の検査が必要になりますが、精神的な症状の場合、検査に異常が出ません。


認知機能


知的な能力は認知機能とも呼ばれ、精神機能の一つとして扱われます。認知機能にはたくさんのものが含まれます。たとえば、記憶力、計算能力、注意を持続する力、ものごとを順番に計画する力、論理的に考える力、想像力、言語能力、コミュニケーション能力などが認知機能です。認知機能に関わる疾患は、発達障害や認知症です。幼い頃、認知機能が正常に発達しなかった場合を発達障害と言います。一方、ある程度、認知機能が成長してから、認知機能に障害が出た場合、認知機能障害と言います。知的な能力や認知機能の障害は改善が難しいのですが、最近では注意欠陥多動障害(ADHD)の改善薬や、認知症の進行を遅らせる薬があります。


発達障害


発達障害には知的障害(ちてきしょうがい)または精神遅滞(せいしんちたい)、注意欠陥多動障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害があります。知的障害は、学校の成績に影響していることが多く、すでに子供の頃に判定されていることが多いのですが、注意欠陥多動障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害は子供の頃に診断されていないことも少なくありません。注意欠陥多動障害(ADHD)は、子供の頃から注意を持続する力、ものごとを順番に計画する力、衝動を理性的に抑える力などの認知機能が発達しなかったものを言います。自閉症スペクトラム障害では、他人の感情についての想像力、コミュニケーション能力などの社会的認知機能が発達しなかったものを言います。なお、ADHDを感覚過敏と誤解している人が多いのですが、あくまでADHDは認知機能の障害だと理解してください。また、「頭の中がうるさい」という症状がADHDに特有のものだという誤解も広まっていますが、あれこれ心配になっている場合は不安症状、色々なアイディアがわいてくる場合は観念奔逸、同じことばかりが浮かんでくる場合は強迫症状、実際に頭の中から声がする場合は幻聴の症状になります。



認知機能障害


認知機能障害が出る代表的な病気は、認知症や頭部外傷などですが、精神疾患でも軽い認知機能障害が出ることが多いです。たとえば、統合失調症の中にも、注意力や言語能力などの認知機能に障害が出る人がいます。



以上のように精神症状やそれに関連する症状はたくさんあります。受診の時のご参考になれば幸いです。

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