【障害者雇用】精神疾患で「働けない」と悩む方が社会復帰するためのガイド
- 斎藤知之
- 2月19日
- 読了時間: 7分

働くことが不安
「今まで働いたことがないけど自分でも働けるのだろうか」
「うつ病になって退職してから、働くことが怖くなってしまった」
精神疾患になると、働くことに不安を感じること人は多いです。不安で就職活動を始められない人もたくさんいます。もしも、あなたが「働きたい気持ちはあるが、自分に合った職場環境や配慮が必要だ」と感じているのであれば、「障害者雇用」という枠組みを考えても良いのかもしれません。
本記事では、精神疾患をもつ方が、長く安定して働くための選択肢である「障害者雇用」の基礎知識、具体的な進め方について解説します。
目次
障害者雇用とはなにか?一般枠との違い
障害者雇用とは、会社が障害のある人を対象に、その障害特性に配慮して雇用する制度です。この障害者には長く精神疾患をもつ人も含まれます。最近では、精神疾患の方の中で、障害者雇用という働き方を選ぶ人が年々増えています。
一般的に、就労形態は大きく以下の3つに分けることができます。
一般雇用枠(クローズ就労):障がいのあることを開示せず就職する(通常の就労を指します)。
一般雇用枠(オープン就労):障がいのあることを開示して就職する。
障害者雇用枠:障害のある人(障害者手帳を保有している人)が対象の雇用枠。
現在の日本では、障害者雇用促進法により、一定以上の企業には、一定の割合以上の障害者雇用が義務づけられています。つまり、ある程度の大きな会社には障害者雇用枠があります。
障害者雇用枠で働くことの特徴は、法律に基づく「合理的配慮(ごうりてきはいりょ)」です。一般枠で就職した場合も合理的配慮を求めることは可能ですが、障害者雇用枠の方が求めやすいのが現実です。
合理的配慮とは
障害者雇用促進法により、事業者(会社)は障害をもつ労働者に対して、障害の特性に配慮する義務があります。個々の場面で障害のある人から「社会的なバリアを取り除いてほしい」という意思が示された場合には、その実施に伴う負担が事業者にとって過重でない範囲で、バリアを取り除く対応をすることとされています。これを「合理的配慮」といいます。
たとえば、精神疾患の方に対しては、以下のような合理的配慮があります。
時間やルールなどの柔軟な運用を行うようにする。たとえば、通院する日を休めるようにしたり、残業を免除したり、時差出勤を認めたりする。
あいまいな指示や一度に複数の指示を伝えると対応できないときには、マニュアルを整備して指示する内容の具体的にしめす、指示を一つずつ出す、優先順位をしめすようにする。
情緒不安定になりそうなときには、別室などの落ち着ける場所で休めるようにする
ただし、合理的配慮はあくまで事業者にとって過重でない範囲になりますので、どこまで配慮できるかは事業者・企業の能力次第になります。経営上や業務上の理由で、事業者が配慮しきれないこともあり、「うちの会社ではここまでの配慮が限界」と言われることもあります。会社に配慮を求める時は、その点を理解しておきましょう。
特例子会社で働く選択肢
障害者雇用を考えるときに、ぜひ知っておくべき存在が「特例子会社(とくれいこがいしゃ)」です。
特例子会社とは、障害者の雇用を促進するために特別に設立された子会社のことで、大手企業などが親会社になります。特例子会社で働く社員は、法律上「親会社に雇用されている」とみなされます。
特例子会社では、「障害者の雇用」が目的とされているため、障害への合理的配慮が徹底されていて、専任の指導員が配置されています。中には、臨床心理士が従業員のカウンセリングを行っているところもあります。
先ほども伝えたとおり、たとえ法律が会社に合理的配慮を義務づけているとしても、どこまで配慮できるかは各会社の能力次第になりますから、あまり配慮できない会社もあります。その点、特例子会社は他の会社よりも合理的配慮の能力が高い会社ですから、より丁寧な配慮が期待できます。
理解しておくべきデメリットと現実
障害者雇用はメリットばかりではありません。キャリアプランを考える上で、以下の現実的な側面も理解しておく必要があります。
給与水準:一般雇用にくらべると、業務範囲や責任が限定される分、給与設定は低くなる傾向があります。
職種の制限:事務補助、データ入力、軽作業などの定型業務が中心となり、キャリアアップの選択肢は一般枠ほど多くありません。
求人の地域差:求人数は年々増加していますが、障害者雇用枠の求人は都市部に集中しており、地方では選択肢が限られる場合があります。
障害者雇用にはこうしたデメリットもありますが、必ずしも障害者雇用を「最終地点」と捉えることはありません。まずは障害者雇用で生活基盤と体調を安定させ、自信がついた段階で一般枠への転職(ステップアップ)を目指す方もいらっしゃいます。
就職の準備期間「就労移行支援」の活用
「いきなり企業で働く自信がない」
「生活リズムが乱れており、毎日決まった時間に起きられない」
このような不安がある場合は、直ちに就職活動を始めるのではなく、「就労移行支援」を利用することもできます。
※就労移行支援とは、障害者総合支援法に基づく福祉サービスの一つで、一般企業への就職を目指す障害のある方(65歳未満)を対象に、通所形式で訓練を行う場所です。「最大2年間」の利用期間内に、職業訓練や実習を通して「自分に向いているしごと・職場環境」を発見し、就職して、長く安定して働くことを目指します。
就労移行支援の主な意義には以下のものがあります。
生活リズムの安定:決まった時間に通所することで、毎朝起きる習慣を身につけ、しごとに必要な体力を得ることができます。
スキル習得:PCスキル、ビジネスマナー、ストレスのコントロール(認知行動療法など)などを学び、就職活動やその後のしごとの継続にいかします。
就職活動・定着支援:応募書類の添削、面接の練習、企業実習などが受けられ、就職後も長く働き続けられるよう支援員がサポートしてくれます。
前年度の世帯年収によりますが、利用者の多くが自己負担なしで就労移行支援を利用しています。「急がば回れ」の精神で、ここでしっかりと準備を整えることが、長期就労への近道となります。
障害者雇用を利用するための具体的なステップ
障害者雇用枠での就職を目指す場合、一般的な転職活動とは異なる手順を踏む必要があります。以下のステップで慎重に進めてください。
Step 1 主治医への相談
精神状態や身体的活動がある程度は改善していないと就職活動は難しいものです。まずはメンタルクリニック等の主治医に、以下の点を相談してください。
病状の安定:精神状態が安定し、働くことができる状態にあるか。
生活リズム:同じ時間に毎朝起きて、同じ時間に寝ることができているか。同じ時間帯に活動できるか。
体力:週20時間以上働く体力があるか。
適切な勤務条件:週何日、1日何時間程度の労働が望ましいか。
まずは主治医から「就労可能」という意見を得ることが、就職活動のスタートラインです。
Step 2 精神障害者保健福祉手帳の申請・取得
障害者雇用枠への応募には、原則として障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)が必要です。これは初診日から6ヶ月以上経過していれば申請が可能です。主治医に専用の診断書を作成してもらい、お住まいの自治体の窓口(区役所や市役所など)で申請します。手帳の発行まで数ヶ月かかる場合があるため、早めの行動がおすすめです。
Step 3 専門の支援機関への登録
一人での就職活動は困難を伴います。障害者雇用に詳しい以下の機関を活用しましょう。
ハローワーク:障害者雇用枠の求人の紹介、職業相談。
就労移行支援事業所:前述の通り、訓練と就活支援を行う施設。
障害者就業・生活支援センター:仕事と生活の両面での相談窓口。
転職エージェント:障害者雇用専門の民間サービス。
あせらず一歩ずつ
精神疾患があるからといって、働くことをあきらめる必要はありません。しかし、無理をして働いても長続きしないことがあります。障害者雇用は、今のあなたの状態に合わせて、無理なく社会参加するための有効な制度です。あせることはありません。自分のペースで、一歩ずつ前に進んでいきましょう。
なお、よりどころメンタルクリニック桜木町では精神保健福祉士(ソーシャルワーカー/ケースワーカー)が障害者雇用、就労移行支援などをご案内しています。詳細は「精神保健福祉士」のページをご参照ください。



















