ベンゾジアゼピンの依存
- 斎藤知之
- 2025年6月26日
- 読了時間: 6分
更新日:2025年11月23日

ベンゾジアゼピン系の薬には抗不安薬と睡眠薬があり、飲むとすぐに効いてくるのが特徴です。効果が確かであるため、臨床現場ではよく使われます。ただし、軽度の依存性があるため、連続して使う場合は数週間程度の使用にとどめる方が望ましいと考えられています。ベンゾジアゼピン系を時々使うだけなら依存性は心配しなくても大丈夫です。
しかし、ベンゾジアゼピン系の薬を長期に使わざるをえない場合もあります。その場合、どうしても依存性が出てきて減らしにくくなってきます。ベンゾジアゼピン系の薬は急な中止で離脱症状が出るので、ゆっくり減らす必要があります。ここではベンゾジアゼピン系薬剤の減量方法についても解説します。
なお、てんかんの治療としてベンゾジアゼピン系の薬を使っている場合は、急に減らすと、てんかん発作が再発することがありとても危険です。絶対に急に止めないようにしてください。
目次
ベンゾジアゼピンとは
ベンゾジアゼピン(benzodiazepine)は脳に作用する向精神薬の一種です。ベンゾ(benzo)とも略されます。ベンゾジアゼピンは不安を取るタイプ(抗不安薬)と、睡眠を促すタイプ(睡眠薬)に大別されます。その他、筋肉の緊張をとったり、てんかん(意識を失ったり、けいれんしたりする症状)を止める作用もあります。即効性があり、便利な薬ではあるのですが、副作用もあります。
ベンゾジアゼピンの副作用でよく問題になるのが依存性です。最近はベンゾジアゼピンの依存性についてご存じの方が増えましたが、過剰にうわさされることも多くなってきました。これは覚せい剤ほどの強い依存性ではないので過剰に心配しなくても良いのですが、お酒やタバコと同じように、やめたくてもやめられない状態になることがあります。ベンゾジアゼピンに依存すると、薬が切れた時に「また薬が欲しい」と強く思うようになります。このように気持ちの面で依存してしまうことを精神的依存と言います。
ベンゾジアゼピンには身体的依存というものもあります。体が薬に依存してしまい、薬を中断すると離脱症状が現れるのです。ベンゾジアゼピンの離脱症状は色々とあります。例えば、動悸(心臓の鼓動が早くなる)、発汗、頭痛、震え、筋肉の痛み、めまい、吐き気などです。また、不安になったり、イライラしたり、眠れなくなったりと情緒不安定になります。記憶力や集中力が落ちることもあります。ひどいと錯乱状態になったり、全身けいれんを起こしたりして、生命の危険が生じることもあります。なので、ベンゾジアゼピンを長く使っている人は、急にやめてはいけません。やめる場合は、少しずつ減らします。
なお、病気の「依存症」と薬の依存は少し違います。依存症とは、依存によって生活が障害されている場合になります。たとえば、朝からベンゾジアゼピン系の睡眠薬を使って1日中ふらふらになり仕事や家事ができなくなるとか、ベンゾジアゼピン系抗不安薬を何度も過量服薬するような状態です。アメリカの統計では、ベンゾジアゼピンを使っている人の1.5%がベンゾジアゼピン依存症になるとのことで、そんなに多くはありません。
依存のほか、ベンゾジアゼピンには、集中力や記憶力の低下といった認知機能障害という副作用もあり、これにより仕事のミスが増えたり、交通事故のリスクが上がるなどの問題があります。また、多量にベンゾジアゼピンを飲むと自分を抑えられなくなる脱抑制という副作用もあります。これはお酒に酔っ払った状態を想像してもらえると理解できると思いますが、攻撃的になったり衝動的になったりします。また、お年寄りだと、ベンゾジアゼピンにより転びやすくなることがあります。こうした副作用は薬を減らしたり中止したりすると改善していきます。
次に、ベンゾジアゼピンの依存への対応について解説していきます。
ベンゾジアゼピン依存の予防
まずは依存を防ぐ方法について解説します。ベンゾジアゼピン系の薬を1ヶ月以上使い続けると依存性が出てくるので、ベンゾジアゼピンを続けて使う場合は数週間以内の使用にとどめることが大事です。または、週に1-2回使うなど、時々使う方が望ましいです。
ベンゾジアゼピン系の薬をたくさん使い過ぎないことも大事です。ジアゼパム換算で1日10mg以上のベンゾジアゼピンを使用すると依存性が出やすくなります。ジアゼパム換算とは、ベンゾジアゼピンがジアゼパム(これもベンゾジアゼピンの一種です)では何mgに相当するのか計算する方法です。例えば、ベンゾジアゼピンの一種であるアルプラゾラムの1.6mgという量は、ジアゼパムの10mgに相当します。
効果の短いものを効果の長いものに置き換える
すでにベンゾジアゼピンを何ヶ月も使っている方は、どうやって減らすか悩まれているかもしれません。
ベンゾジアゼピンの作用時間が短いもの(半減期が短いもの)ほど離脱症状が出やすいため減らしやすくなります。今現在、効果の短いベンゾジアゼピンを使っている場合は、効果の長いベンゾジアゼピンに置き換えてから減らすことが効果的です。
たとえば、現在内服しているベンゾジアゼピンを、ジアゼパムという効果の長いタイプのベンゾジアゼピンに置き換えてから減らすという方法があります。この場合は、先ほど説明したジアゼパム換算を使います。現在内服しているベンゾジアゼピンがジアゼパム換算で何mgなのかを計算してから、同じ量に置き換えます。その上で徐々に量を減らしていきます。
ベンゾジアゼピンは少しずつ減らす
よく自分の判断でベンゾジアゼピンをいっきに減らして離脱症状で苦しんでいる方がいます。ベンゾジアゼピンは急にやめると離脱症状が出て危険なので、少しずつ減らしていくことが大事です。参考文献では最低でも10週間以上かけて少しずつ減らし、中止していくようにと書かれています。つまり、目安は3ヶ月くらいです。もちろん、もっと長い時間がかかる場合もあります。あせって減らすと良くないので、気をつけてください。
精神状態を安定させる
不安が強い方は、不安症状や自律神経症状をベンゾジアゼピンの離脱症状だと誤解することがあります。不安は強まると動悸、発汗、呼吸困難感、手の痺れや震えなど様々なからだの症状を出します。これは、ベンゾジアゼピンの離脱症状とよく似ているため区別が難しいのです。今現在、不安が強く、こうした自律神経症状が出ている場合は、無理にベンゾジアゼピンを減らさない方が良いでしょう。あせって減らすと、不安による自律神経症状が出たり、いてもたってもいられないような焦燥感が出たり、眠れなくなったりしてしまいます。ベンゾジアゼピンを減らす前に、まずは気持ちや感情を安定させることが大事です。メンタルの病気をかかえている場合、ベンゾジアゼピン以外の治療薬がありますから、別の治療薬に切り替えていくと良いかもしれません。ただし、メンタルの薬の切り替えは急に行っては危険ですから、あせらないでください。通常は、数週間以上かけて、ゆっくり慎重に切り替えていきます。また、メンタルの治療は、疾患や性格ごとに異なるので、自分の主治医に治療法についてよく聞いてみてください。
以上になります。ご参考になれば幸いです。
参考文献:



















