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ADHD-注意欠陥多動性障害

斎藤知之
6 日前
読了時間: 9分

更新日:5 日前


ADHD

注)最近、ADHDではないのに自分がADHDだと主張する人が多く、医療機関としても困っています。普通は医師が「病気ではない」と話すと患者さんは安心するものです。しかし、自分がADHDだと主張する人たちの中には「ADHDではない」と話すと不満を述べたり、怒り出す人すらいます。こういうケースを減らすためにADHDについて詳しく解説します。


ADHD(注意欠陥多動性障害)とは、注意を維持する能力や衝動を制御する能力の障害です。これにより学業や仕事に明確な支障をきたしている場合のみADHDだと診断します。したがって、学業や仕事に支障がないような「軽い症状」の人や、普通の生活をおくれているような人はADHDではありません。


目次


ADHDの症状


ADHDとは、注意欠陥多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)の略語で、幼少期からの能力の障害を意味します。ADHDは女性よりも男性に多いことが知られています。また、遺伝的な要因もあり、親のどちらかがADHDだと半分くらいの確率で子供もADHDとなります。


ADHDでは子供の頃から注意を維持する能力または衝動を抑える能力が障害されています。注意を維持できないことを不注意と言い、衝動をコントロールできないことを多動または衝動性と言います。ADHDでも人によって症状は様々で、不注意のみ、多動・衝動性のみ、不注意と多動・衝動性の両方がある場合などがあります。


不注意症状


ADHDの不注意症状については、以下のようなものです。ただし、人間ならだれもが不注意があります。不注意が病的な症状であると考える時は、その症状の程度が強く、学業、生活、仕事に支障がある場合です。以下の症状のうち5つ以上(17歳未満は6つ以上)が子供の頃から続いており、学業、生活、仕事に明確な支障があるならADHDの可能性があります。


  1. 学業、仕事、または他の活動中に集中することができない、または不注意で間違いをする。例えば、細部を見過ごしたり、作業が不正確になる。

  2. 課題または遊びの活動中に、注意を持続できないことが多い。例えば、授業、会話、または長時間の読書に集中し続けることが難しい。

  3. 直接話しかけられているのに、聞いていないことが多い。

  4. 学業や仕事を、やり遂げることができないことが多い。例えば、課題を始めるが、すぐに集中できなくなったり、脱線してしまう。

  5. 課題や活動を順序立てて行うことが難しい。たとえば、資料や持ち物を整理できない、作業が雑でまとまりがない、時間の管理が苦手、締め切りを守れないなど。

  6. 努力の持続が必要な課題(宿題や書類にもれなく記入すること、長い文書を見直すことなど)を避けることが多い。

  7. 課題や活動に必要なもの(学校教材、書類、眼鏡、携帯電話、鍵、財布など)をよく無くしてしまう。

  8. ちょっとしたことで、すぐに気が散ってしまうことが多い。

  9. 日々の活動で忘れっぽい。例えば、用事やお使い、お金の支払い、人と会う約束などを忘れてしまう。


多動・衝動性


多動・衝動性については、以下のものがあり、このうち5つ以上(17歳未満は6つ以上)が子供の頃から続いており、学業、生活、仕事に明確な支障がある場合、ADHDの可能性があります。


  1. 手足をそわそわ動かしたりトントン叩いたり、椅子の上でもじもじしたりすることが多い。

  2. 座っていないといけない場面で、席を離れてしまうことが多い。たとえば、教室や職場など、そこにとどまらないといけない場面で、自分の場所から離れる。

  3. 走り回ったり、高いところに登ったりなど落ち着きがないことが多い。

  4. 静かに遊んだり、余暇活動・趣味を楽しむことが、あまりできない。

  5. じっとしていられず、非常に活発に行動することがよくある。

  6. しゃべりすぎることが多い。

  7. 相手の質問が終わる前に答え始めたり、相手の言葉をさえぎったりしてしまうことが多い。会話で自分の番を待つことができない。

  8. 自分の順番を待つことができない。例えば、列に並ぶのが難しい。

  9. 他人を妨害したり邪魔したりすることが多い。例えば、他人のことに口出ししたり、人の物を横取りする。


こうしたADHDの症状は子供の時に強く、成長するにつれて改善する経過をたどります。大人になるとADHDの症状がほとんど残っていない場合もあります。つまり、ADHDは成長とともに治ることもあるのです。


良い検査がない


残念ながら、現在のところ、脳の検査によりADHDと診断することができません。それにもかかわらず、一部のクリニックが脳の検査でADHDだと診断できるかのような誇大広告を行っており社会問題化しています。こうした検査は医学的に根拠がないため国の認可がおりていません。そのため医療保険が適用されず、高額な自由診療になります。こうした誇大広告にだまされ、お金を失わないようにしてください。


また、知能検査によりADHDを診断する医療機関もありますが、これは医学的に間違えです。統計的には、知能検査ではADHDだと診断できないことが分かっています。


現在のところ、ADHDの検査には、症状のチェックシートみたいなものしかありませんし、この精度は低く、医師が症状について質問していく方が精度は高くなります。診断の決め手は検査ではなく、子供の頃の症状を確認することです。このため、通信簿や親の証言などが有益な情報になります。


鑑別疾患


たとえADHDの症状があっても、ADHDではない場合があります。診察では、こうした別の可能性についても追及していきます。以下に鑑別すべきポイントを記載します。


他の精神疾患


うつ病、不安症、統合失調症など様々な精神疾患により、集中力が途切れたり、衝動的になったりすることがあります。これをADHDと誤解する場合があります。こうした精神疾患によりADHDに似た症状が出る場合、子供の頃は症状が無く、精神状態が不安定になってから症状が出ます。一方、ADHDは、子供の頃に症状が強く、成長するにつれて症状が軽くなります。つまり、精神疾患による不注意症状と、ADHDの症状は逆の経過をたどるので、見分けがつきます。


他の発達障害


知的障害(精神遅滞)がADHDと間違われることがあります。これは知能検査(WISC、WAISなど)により知能指数を測定すると鑑別できますが、学歴や学校の成績によっても大体の判断は可能です。


他の身体疾患


甲状腺ホルモンの疾患など身体的な病気で集中力が阻害されたり、衝動的になることがあります。このため、こうした疾患とADHDとの鑑別が必要になり、一般的には血液検査で鑑別します。


過剰要求


疾患ではないですが、周りの人からの要求・期待にこたえようと頑張りすぎている方は、自分がADHDだと思い込むことがあります。十分に集中して勉強したり、働いたりしているのに、さらに頑張れと周囲から要求されたり、期待されたりすると、その要求や期待にこたえられない事態になります。むしろ、強いプレッシャーを感じて、ミスが増えたり、集中が途切れたりすることもあります。すると、自分はADHDだから仕方ないという言い訳が必要になります。これはADHDではなく、周囲が本人を追い込みすぎているという状況です。プレッシャーが増えれば増えるほどミスは増え、集中力は下がりますから、プレッシャーを下げるためにも、無理をせず、マイペースに勉強したり、働いたりすることが大切です。周囲の人は、本人を追い込まないように気をつけてください。


薬物療法


ADHDの症状は薬物療法で改善できます。以下に薬を解説します。


メチルフェニデート(コンサータ)


ADHDによく使われるのはメチルフェニデート(コンサータ)という薬で、海外ではADHDに対する第一選択薬です。飲むとすぐに効果が出るという特徴があり、集中力の改善が期待でき、眠気覚ましの効果もあります。ただ、自分に合った用量は人によって違いますから、一般的には低用量から始めて効果や副作用を見ながら用量を増やし、自分にとっての適量を探していきます。問題点は、精神的な副作用であり、軽度の依存性、乱用のリスクがあります。ただ、これらは軽度であり、一度コンサータを使い始めたら中止できないというほどのものではありませんので、あまり心配しなくて大丈夫です。その他、コンサータには、不安やイライラが強まる、眠れなくなるなどの精神的な副作用や、食欲低下、脈拍や血圧を上げるなどの副作用が知られています。


日本ではADHD適正流通管理システムに登録し、IDを発行してもらわないとコンサータを処方してもらうことができません。また、処方する医師側にも資格が求められます。処方日数は30日以内に限定されます。よりどころメンタルクリニック桜木町ではコンサータを処方していますが、現在のところ日本ではコンサータの流通の問題があるため新規にコンサータの処方ができませんので、予めご了承ください。


リスデキサンフェタミン(ビバンセ)


リスデキサンフェタミン(ビバンセ)という薬もADHDの治療選択肢になります。ビバンセはコンサータと同じタイプで、効果や副作用はよく似ています。ただし、日本では、ビバンセは18歳未満に開始する場合しか処方できません(すでに18才未満の段階でビバンセを使ったことのある人になら、18才以上になってからも続けて処方できます)。また、コンサータと同様、ADHD適正流通管理システムに登録が必要で、処方する医師側にも資格が求められます。当院ではビバンセの処方も可能です。


アトモキセチン(ストラテラ)


ADHDの症状改善には、アトモキセチン(ストラテラ)もよく使われます。アトモキセチンの効果は、コンサータよりも弱いのですが、精神的な依存性がないため、精神状態に問題がある場合には使いやすい薬です。処方に登録や特別な資格が必要なく、30日の処方制限もありません。アトモキセチンは、コンサータと違って即効性が無く、効果が出るまでに何週間もかかるので、辛抱強く毎日飲み続けないといけません。途中でやめてしまうと効果が出ません。また、内服開始後に吐き気、頭痛、眠気などの副作用が出ることがあります。こうした副作用は時間と共に改善していくことが多いです。


グアンファシン(インチュニブ)


グアンファシン(インチュニブ)という治療薬もあります。インチュニブも、アトモキセチンと同じように、処方に登録や特別な資格が必要なく、30日の処方制限もありません。インチュニブについても、コンサータのような即効性はなく、何週間も継続しないと効果は出ません。また、眠気、めまい、血圧低下などの副作用が出やすいという問題があります。インチュニブを開始する時は、徐々に増量します。また、中止する時は、急な中止で離脱症状の可能性があるため徐々に減らしてから中止します。


ADHDで気をつけること


以下にADHDの症状改善のための工夫や気をつけることをまとめます。


習慣作り


簡単なことではありますが、スマホのスケジュール帳やメモ帳機能などを活用して、忘れ物を減らすための習慣を作ることは大事です。できればルーチンワークを増やしておくと、忘れ物が減ります。また、同時にたくさんの作業をするとミスが増えるので、作業を一つずつ順番に行うよう心がけてください。


精神状態を保つ


焦ったり、強いプレッシャーを感じたりすると、ミスが増えたり、衝動的になったりします。ミスや衝動性を減らすためには、自分の気持ちを安定させることが大切です。リラックスする時間を作ったり、気分転換したりして、精神状態を保ちましょう。また、周囲の人には、プレッシャーをかけないようお願いできると良いと思います。それが難しい場合、プレッシャーをかける人から離れることも考えた方が良いです。


成長を待つ


まだ幼い場合、能力の成長が期待できます。成長するにつれてADHDの症状が自然と減ることは多いです。焦らずに成長を待つことも大事です。親は子供に対して過剰にプレッシャーをかけないように配慮して、ミスを減らす習慣を一緒に作っていくよう考えてみてください。

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